ADHDは職場でのデメリットも多く、職場で理解されないと大変ツライ障害です。退職したいと考える一方で「退職しても大丈夫?」「退職は間違った考えなのか?」と悩んでいる人もいるでしょう。
結論から言うと、ADHDで退職したって大丈夫です。むしろ自分にとってよりよい仕事に出会える可能性もあります。ぜひ最後まで読んで、退職を検討する参考にしてください。
- 結論:ADHDで退職することは問題ない
- ADHDの人が退職しようか悩む原因4つ
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結論:ADHDで退職することは問題ありません
結論からいうとADHDで退職することは全く問題ありません。なかには「退職」というワードに「逃げ」や「甘え」といったネガティブな印象を持っている人もいるでしょう。
しかし最近では退職して転職することは珍しくなく、「ちょっと他の職場を見てみたい」といったとても気軽な理由で退職する人もいるくらいです。
それに民法627条では「退職の申し出をして2週間後には退職できる」と労働者の「退職の自由」を認めています。つまり退職することに、負い目を感じる必要はないのです。
ADHD(注意欠如多動性障害)とは?
ADHDとは発達障害の一つです。日本語で注意欠如多動性障害といわれるように、「不注意」「多動傾向」があるのが特徴です。
- ケアレスミスが多い
- 集中力のコントロールが難しい
- モノをなくすことが多い
- スケジュール管理が苦手
- 約束を忘れてしまう
- 片づけが苦手
- 段取りを立てるのが苦手
- 同じ作業を続けるのが苦手
- 落ち着きがない
- 一方的なおしゃべりをする
- 思ったことをすぐ言ってしまう
- 感情が高ぶりやすい
- 自分の順番を待つのが苦手
- 金銭管理が苦手
- よく考えずに独断で行動してしまう
残念ながらADHDの根本的な原因はまだ解明されていません。大人のADHDは多動傾向よりも「不注意」が目立ってくる傾向があるようです。
ADHDの人が退職しようか悩む原因4つ
ADHDの人が退職したくなる原因はおもにこの4つが挙げられます。
- 業務内容が合わない
- 職場の人間関係が上手くいかない
- 職場に障害を隠すことがツライ
- うつ病など精神疾患になってしまった
具体的にみていきましょう。
業務内容が合わない
業務内容が自分に合わない、向いていないというのは、ADHDの人に限ったことではなく会社を辞めたくなる大きな原因になります。
「障害があるんだから、向き不向きで仕事を選べない」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。仕事でうまいくことと失敗することを分析してみれば、自分の向き不向きが見えてくるはずです。
「業務内容が合わない」と感じたらどの点が合わないのか見極め、次の会社選びを失敗しないようにしましょう。
職場の人間関係が上手くいかない
厚生労働省が後悔している「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、男性では25~34歳女性では25歳~44歳の幅広い年齢層で「職場の人間関係が好ましくない」という理由で退職していることがわかっています。
会社の同僚は1日のうちで家族よりも長い時間を過ごす場合も多く、仕事のストレスを軽減するためにも人間関係は重要です。
ADHDの場合「話を聞かない」「すぐ怒る」など、円滑なコミュニケーションを図るうえで困難な部分があります。職場の人に理解を得られていないと人間関係を築けず、孤立してしまって仕事を辞めていく人もいるようです。
職場に障害を隠すことがツライ
なかには職場に障害を隠して採用されている人もいるでしょう。障害を隠している罪悪感やバレる不安感で働くことがツラくなるかもしれません。
ミスや失敗があっても障害をオープンにしていれば、上司や同僚は障害に合わせた対応をしてくれます。しかし隠していると、厳しく叱られたり評価が低くなったりするはずです。
また採用後にカミングアウトすると、上司や同僚との信頼関係が崩れてしまう可能性があります。
うつ病など精神疾患になってしまった
ADHDの人は職場のコミュニケーションがうまくいかない、業務内容が合わなくてツライといったことから、うつ病などの精神疾患を患ってしまうことがあります。
このように「発達障害の特性に伴うストレスが原因で精神疾患を患う」ことを二次障害といいます。
ADHDの人が二次障害になると特性だけでなく精神疾患の問題も抱えることになり、とても苦しいです。
仕事を無理して続けるよりも、休養して健康を取り戻すことが最優先です。会社を辞めたくなるほどツライときは退職して、療養に専念しましょう。
ADHDの人が仕事に活かせる長所
ADHDの特徴にも、仕事に活かせる長所があります。
- 感受性が豊か
- 行動力がある
- 興味のあることをどこまでも追求できる
このような特徴は仕事をするうえで、強みになるはずです。
感受性が豊か
ADHDの人は感情の起伏が激しいことからわかるように、感受性がとても豊かです。そのためいろんなことから刺激を受け、新しいアイデアやおもしろい企画を生み出すことができるはずです。
また好奇心が強い面もあるので、前例のないことでも迷いなくチャレンジできます。
行動力がある
「独断で行動してしまう」「待つのが苦手」というと、とてもネガティブな表現です。しかし少し見方を変えると、「行動力がある」「決断力がある」ともいえます。
あれこれと迷うことなく素早く結論を出して、すぐに行動に移せるのでアイデアから結果に繋げるのも早いです。
興味のあることをどこまでも追求できる
ADHDの特性の一つに「集中力のコントロールが難しい」というものがあります。これは単に集中力が続かないというわけではありません。反対に集中力が止まらないということもあるのです。
ADHDの人は興味のあることに関して、抜群の集中力を発揮して取り組むことができます。そのため好きなことであれば、人並外れたスピードでこなすことも可能です。
また好きなことならとことん追求できるので、芸術や研究などが得意な傾向もあります。
ADHDの人が仕事で悩みやすい短所
仕事の失敗は全てが障害のせいとは限りませんが、ADHDの特性が大きく関わっている場合もあります。
- ケアレスミスが多くイライラされる
- 整理整頓・スケジュール管理が苦手
- 集中力が続かず持続力がないと思われる
自分の特性が仕事にどのような影響を与えるのか、を理解しておくことも大切です。
ケアレスミスが多くイライラされる
ADHDの人は集中力のコントロールが難しく、何かに気を取られることが多いです。そのためケアレスミスが増えてしまいます。一度の失敗なら許されてもミスを繰り返すと周囲をイライラさせたり、上司に叱られたりするはずです。
またミスの積み重ねで顧客や取引先からのクレームに発展することも考えられます。
Aさん
Bさん
自分では注意しているつもりなのにミスが繰り返し起こり、落ち込んでしまうことも多いのではないでしょうか。
「一度失敗したことはメモを取って、チェックポイントを明確にしておく」「時間を置いてもう一度チェックする」といったようにチェックの方法を工夫して、ミスを減らす対策をとりましょう。
整理整頓・スケジュール管理が苦手
ADHDの人には物事の整理整頓やスケジュール管理が苦手な人がいます。この特性は業務が溜まってくると先延ばしにしたり業務そのものを忘れてしまったりする傾向があります。
また一つの業務に対してどんどん新しいアイデアが湧いてきて、他に期限が近い業務があっても手につかないということもあるようです。
業務の優先順位やスケジュール管理ができていないと、社内の業務が滞るだけでなく取引先や顧客にも迷惑がかかってしまいます。
「ToDoリストを作って業務を見える化する」「スケジュール管理は1つにまとめる」「すぐにメモをとる」といった、任された業務を漏らさない対策を取ることが必要です。
集中力が続かず持続力がないと思われる
ADHDの人は興味のないことに集中して取り組むことが苦手です。業務を始めても一度休憩をはさんでしまうと注意力散漫になり、作業がまったく進まなくなるということもあります。
これを繰り返すと、障害に理解がない職場では「好きなことばっかりする人」「嫌なことは途中で放り出す人」と自分勝手な人に思われがちです。
Aさん
Bさん
業務に集中できないときは他の業務を始めるのではなく、「今の業務をする」ということを心がけてみましょう。1つでも1つでも作業を進めていく習慣が大切です。
ADHDの人に向いている仕事
以下はADHDの人に向いている仕事の一例です。
ADHDの人に向いている仕事 | 仕事の種類 |
---|---|
デザイナー系の仕事 |
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プログラマー系・エンジニア系の仕事 |
|
アーティスト関係の仕事 |
|
自分の好きを追求する仕事 |
|
ADHDの人は自由度が高く、個人のスキルが要求・評価される分野の仕事が向いています。
例えば「フレックス」や「裁量労働制」が導入されている会社であれば、勤務時間に自由度があり体調に合わせた出勤が可能なので、ADHDの人でも仕事がしやすい環境です。
また会社に入らずにフリーランスとして活動すれば、嫌な業務に関わる必要はありません。
ADHDの人に向いていない仕事
ADHDの人に向いていない仕事の例もご紹介します。
ADHDの人に向いていない仕事 | 仕事の種類 |
---|---|
マルチタスクの仕事 |
|
ミスが許されない仕事 |
|
単純作業が続く仕事 |
|
ADHDの人は「マルチタスク」「ミスをしない」「臨機応変」「単純作業の連続」に向いていない傾向があります。
このような仕事はどうしても苦手とする業務が発生するので、よほど好きでない限りは避けたほうがいいでしょう。
ADHDで退職する前に!実践したい対処法
ADHDは自分を思うようにコントロールできず、ミスや失敗の繰り返しで仕事がツラくなることもあります。またADHDは感受性が強く、上司や同僚から受けた指摘や注意が大きな心のダメージになるかもしれません。
しかしせっかく今まで頑張ってきた仕事なので、いきなり退職してしまうのはもったいないです。退職する前に実践してほしい対処法があります。
- 医療機関を受診する
- 家族と話し合う
- 産業医に相談する
- 仕事を休んでみる
- 部署異動を願い出る
医療機関を受診する
心身に不調がある場合は無理せずに心療内科を受診するようにしましょう。
- 眠れない
- 食欲・体重の変化
- 憂うつな気持ちになる
- なにをしても楽しくない
- 落ち着かない、不安になる
- 家に籠りがちになる
このような症状が2週間以上続くのはうつ病の兆候の可能性があります。このような状態のときは何よりも、治療と休養が最優先です。放置して悪化してしまうほど治療が難しく、社会復帰できなくなります。
医療機関から診断書がもらえるなら、休職することも検討しましょう。
家族と話し合う
退職する決意をする前に、家族と話し合ってみましょう。「家族に迷惑かけたくない」と思うかもしれませんが、あなたのことを一番理解し心配してくれているのは家族の人のはずです。
相談することで退職以外の選択肢を教えてくれたり、自分では思いつかない業種を転職先として提案してくれたりするかもしれません。
相談をためらってタイミングを失っていると、「なんで言ってくれなかったんだ!」とかえって家族とトラブルになる可能性もあります。余計な心配や迷惑をかけないためにも、家族への相談は大切です。
産業医に相談する
産業医に相談してみるのも対処法の一つです。
産業医とは労働者が健康で快適な環境で仕事ができるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のことです。
従業員数 | 産業医 |
---|---|
50~3,000 名の事業場 | 1名以上 |
3,001 人以上の事業場 | 2名以上 |
産業医に相談したら「上司に相談内容がバレてしまうのでは?」と不安な人もいるかもしれません。しかし産業医への相談内容は個人情報になるので、上司に報告されることはありません。
ただし状況によっては本人に了解を取ったうえで上司と情報を共有し、職場の環境改善に働きかけてくれることもあります。
支援機関に相談する
会社に産業医が設置されていない場合は支援機関に相談してみることもいいでしょう。
- 発達障害情報・支援センター…発達障害のある人が自信や誇りを持って生活できるように様々な間接支援を行っています。
- 障害者就業・生活支援センター…障害がある方の就業面と生活面のサポートを行っています。
お住まいに最寄りの窓口で相談を受け付けています。基本的に無料ですのでぜひ利用してみてください。
仕事を休んでみる
会社の休職制度を使って、職場から離れてみましょう。休職すれば辞めたいと思う気持ちが軽減されるかもしれません。またどうして辞めたいのか、落ち着いて考える時間を作ることができます。
休職制度は各会社で違いますが、以下のような場合が多いようです。正社員とパート・アルバイトでは扱いが違うこともあるので、就業規則で確認するようにしましょう。
大企業 | 中小企業 | |
---|---|---|
休職期間 | 1年以上~数年 | 数カ月~1年程度
(勤続年数が短い場合は適用除外となることもある) |
休職理由 | 病気やけがに加え、留学など | 病気やケガに限る |
休職期間の賃金 | 休職理由によって賃金が支給される場合がある | 基本的に無給 |
部署異動を願い出る
上司に相談して他の部署に異動させてもらえば、仕事を続けられるかもしれません。他の部署に自分のできる業務があるのなら相談する価値はあります。
ただし会社は必要に応じて部署ごとに人数が割り振られているので、すぐに希望が通るとは限りません。部署異動を願い出るときは一度で諦めるのではなく、何度も相談する根気が必要です。
対処してもツライなら退職するのもアリ!
Aさん
Bさん
対処法を試しても効果を感じられないのなら、覚悟を決めて退職するのもアリです。
ツライ思いをしながら無理して働き続けると心身に影響を及ぼします。また能力や成果で認められにくい職場に居続けることは、あなたのキャリアにとってプラスになるとは考えられません。
そもそも仕事は人生を豊かにするためのものなので、仕事をすることでツライ思いをして人生を台無しするようでは本末転倒です。
退職代行を使えば即日退職も可能
Aさん
Bさん
退職代行を利用すれば依頼したその日から会社に行かず会社の人とも直接話さず、スムーズに退職することができます。
本来退職は「退職の申し出をしてから2週間後」と法律で決まっています。しかし退職代行は退職の申し出から退職日までの間、有給消化や欠勤扱いにできるよう会社と交渉してくれます。
そのため依頼した日から会社に行く必要がなくなり、「実質即日退職」が可能なのです。
ただし退職代行にはこのような交渉ができない「非弁業者」が存在します。非弁業者が交渉を行うと法律違反となり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
運営元 | 交渉 |
---|---|
民間企業 | できない |
労働組合 | できる |
弁護士 | できる |
退職代行は交渉ができる「弁護士」か「労働組合」の業者を選ぶようにしましょう。
ADHDで退職したい!退職したくなる原因と対処法とは?向いている仕事までまとめて解説 まとめ
ADHDには「不注意」「多動」といった特徴があり、仕事の向き不向きがはっきりと分かれています。
自分の特性を理解し、対策を取りながら仕事に励むことが大切です。しかし仕事がしんどくなってしまったら無理をし過ぎずに、家族や支援機関に相談をしたり休養をとったりするようにしましょう。
現状を見つめなおすことができますし、人からのアドバイスは力になるはずです。
もしそれでも苦しいようなら仕事を辞めることを検討しましょう。今どき転職は珍しくありません。焦らずあなたにあった生き方を見つけましょう。