失業手当は、働く人々にとって重要なセーフティネットの一つです。予期せぬ失業に直面した際、生活の安定を支える重要な役割を果たしています。しかし、多くの人々が「失業手当は何回もらえるのか」「受給回数に制限はあるのか」といった疑問を抱いています。
本記事では、失業手当の受給回数制限について詳しく解説します。基本的な受給可能回数から、年齢や特例措置による違い、さらには受給回数に影響を与える要因まで、幅広く情報をお届けします。また、最新の制度変更や特例措置についても触れ、失業手当を最大限活用するためのアドバイスも提供します。
失業手当の基本を知ろう!
まず最初に失業手当の基本情報をしっかりと頭に入れていきましょう。
失業手当とは
失業手当は、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれる制度です。失業手当は、働く人々が安心して職業生活を送れるよう、国が管理・運営する雇用保険制度の一部として機能しています。
- 失業期間中の生活を経済的に支援すること
- 失業期間中の求職活動を促進すること
受給者は、一定の条件を満たしながら求職活動を行うことで、定期的に給付を受けることができます。この制度により、失業者は生活の基盤を維持しつつ、自身のスキルや経験に合った新たな職を探す時間的余裕を得ることができます。
失業手当の受給資格
失業手当を受給するためには、いくつかの資格要件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 離職前の一定期間(原則として2年間)に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
- 失業状態にあり、積極的に求職活動を行っていること
-
心身ともに就労が可能な状態であること
これらの条件を満たしていれば、ハローワークで失業の認定を受け、失業手当の受給を開始することができます。ただし、自己都合による退職の場合は、給付開始までに3ヶ月の待機期間が設けられることがあります。
給付額の計算方法
失業手当の給付額は、離職前の賃金をもとに計算されます。
【失業手当の給付額】
1日当たりの基本手当額=離職前6ヶ月の賃金の平均日額×年齢ごとの給付率(50~80%)
給付額には上限と下限が設定されておりますので、厚生労働省のホームページにて確認しましょう。
令和5年8月1日より年齢区分に応じた賃金日額・基本手当日額の上限額が変更となります。
雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和5 年8 月 1 日から~/厚生労働省
実際の月々の給付額は、この日額に支給日数を乗じて計算されます。支給日数は、原則として月に13日から17日程度ですが、個々の状況によって異なる場合があります。
失業手当の基本情報を理解することは、この制度を効果的に利用する第一歩です。
次のセクションでは、失業手当の受給回数制限について詳しく見ていきましょう。
失業手当に受給回数制限はあるの?
失業手当の概要をご理解いただいた中で、本題の受給回数に制限があるのかを確認していきましょう。
受給可能回数に制限はある!
失業手当の受給回数には基本的な制限があります。一般的に、1回の失業につき1回の受給が可能です。ただし、この「1回」の期間は、受給者の年齢や被保険者であった期間によって異なります。
重要なのは、この「1回」の受給が終了した後、再び失業手当を受給するためには、新たに雇用保険の被保険者として働き、再度受給資格を得る必要があるということです。つまり、連続して失業手当を受給することはできません。
年齢により受給可能日数は変化する!
失業手当の受給可能日数は、離職時の年齢によって大きく異なります。一般的に、年齢が高くなるほど、受給可能日数が長くなる傾向があります。これは、高年齢者ほど再就職が困難になる可能性が高いことを考慮した措置です。
特例措置による受給日数の延長がある!
特定の状況下では、通常の受給可能日数を超えて失業手当を受給できる特例措置が存在します。
- 障害者等の就職困難者に対する給付延長
- 雇止めなどによる離職者に対する給付延長
- 災害等により離職を余儀なくされた者に対する給付延長
幅は広いですが、上にあげた延長は最大60日~300日の延長が可能となります。
これらの特例措置は、特定の条件を満たす必要があり、自動的に適用されるわけではありません。該当する可能性がある場合は、ハローワークに相談し、適用の可否を確認することが重要です。
失業手当の受給回数制限は、単純に「何回」という形で定められているわけではなく、様々な要因によって変動する複雑な仕組みとなっています。
次のセクションでは、これらの受給回数に影響を与える要因について、さらに詳しく見ていきましょう。
失業手当の受給回数に影響を与える要因は?
失業手当の受給回数は、様々な要因によって影響を受けます。
要因①雇用保険の加入期間
雇用保険の加入期間は、失業手当の受給可能日数に直接影響を与える重要な要素です。一般的に、加入期間が長いほど、受給可能日数が長くなります。
加入期間と受給可能日数の関係はハローワークで、ご自身の受給日数を確認しましょう。
30歳以上45歳未満の場合は以下の通りになります。
1年以上5年未満:90日
5年以上10年未満:120日
20年以上:210日
基本手当の所定給付日数/ハローワーク
このように、長期間雇用保険に加入していることで、より長期の失業手当受給が可能になります。これは、長年働いてきた労働者の生活保障を重視する制度設計の表れといえます。
要因②離職理由
離職理由も失業手当の受給に大きな影響を与えます。主に以下の3つのカテゴリーに分類されます:
- 倒産や解雇、雇い止めなどの会社都合離職
- 自己都合退職などの自己都合離職
- 会社都合離職の中で特に配慮を要する特定受給資格者
特定受給資格者に該当する場合は、より手厚い保護が受けられ、受給期間が延長されることがあります。
要因③再就職活動の状況
失業手当の受給中は、積極的な再就職活動が求められます。この活動状況が、実質的な受給回数に影響を与える場合があります。
求職活動を怠ったり、正当な理由なく職業紹介や職業指導を拒否したりした場合、失業手当の支給が停止されることがあります。逆に、積極的に求職活動を行い、職業訓練などに参加する場合、受給期間が延長されたり、追加の給付を受けられたりする可能性があります。
また、再就職手当という制度もあります。これは、失業手当の受給期間中に再就職した場合、残りの受給日数に応じて一時金が支給される制度です。早期に再就職することで、結果的により多くの給付を受けられる可能性があります。
次のセクションでは、受給回数の上限に達した後の選択肢について探っていきます。
失業手当が受給回数上限となったら?
失業手当の受給回数には制限があり、上限に達した後は新たな対策が必要となります。ここでは、その際の主な選択肢について詳しく解説します。
選択肢①職業訓練の受講
失業手当の受給期間が終了した後、あるいは受給資格がない場合でも、職業訓練を受講することで生活支援を受けられる可能性があります。
- 失業手当を受給できない方を対象とした「求職者支援訓練」
- より専門的なスキルを身につけるための「公共職業訓練」
これらの職業訓練は、単に生活支援を受けるだけでなく、新たなスキルを獲得することで再就職の可能性を高める効果もあります。特に、産業構造の変化が激しい現代では、継続的なスキルアップが重要となっています。
選択肢②求職者支援制度の利用
求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者を対象とした制度です。この制度では、前述の求職者支援訓練の受講に加え、様々な就職支援サービスを受けることができます。
- キャリアコンサルティング
- 履歴書・職務経歴書の作成支援
- 面接対策
- ハローワークからの求人情報の提供や職業紹介
この制度を利用することで、単に金銭的な支援を受けるだけでなく、より効果的な就職活動を行うことができます。特に、長期間失業状態にある場合や、転職を考えている場合には、この制度を活用することで新たな可能性を見出せる可能性があります。
選択肢③その他の社会保障制度
失業手当や上記の制度を利用しても、なお生活に困難がある場合は、他の社会保障制度の利用を検討する必要があります。主な選択肢としては以下のようなものがあります:
- 最低限度の生活を保障する「生活保護」
- 家賃相当額を支給する「住居確保給付金」
- 生活再建に向けて貸付を行う「総合支援資金」
- 国民健康保険料や住民税などの減免する各種減免制度
これらの制度は、それぞれ申請条件や支給要件が異なります。自身の状況に合わせて、市区町村の福祉窓口や社会福祉協議会などに相談することが重要です。
失業手当の受給回数に上限があるからといって、支援の選択肢がなくなるわけではありません。様々な制度を組み合わせることで、生活の安定を図りながら、再就職に向けた準備を進めることができます。
次のセクションでは、失業手当の受給回数に関する最新情報について見ていきます。
失業手当を最大限活用するためのアドバイス
失業手当は、単に受給するだけでなく、効果的に活用することが重要です。ここでは、失業手当を最大限に活用し、スムーズな再就職につなげるためのアドバイスを提供します。
早期の手続き開始をしよう!
失業手当の受給を最大限に活用するためには、早期に手続きを開始することが重要です。離職後、できるだけ速やかにハローワークに行き、失業の認定を受けましょう。手続きの遅れは、受給可能期間の短縮につながる可能性があります。
また、必要書類(離職票、住民票、マイナンバーカードなど)を事前に準備しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。不明な点があれば、ためらわずにハローワークに相談しましょう。
再就職活動を怠らない!
失業手当の受給中は、積極的な再就職活動が求められます。これは単なる義務ではなく、早期の再就職を実現するための重要な機会です。
- 定期的な求人情報のチェック
- 複数の求人サイトや人材紹介会社の活用
- 職業訓練や資格取得の検討
- ネットワーキングイベントへの参加
また、再就職手当制度を活用することで、早期に再就職した場合により多くの給付を受けられる可能性があります。再就職のチャンスを逃さないよう、常にアンテナを張っておくことが大切です。
スキルアップの機会活用
失業期間は、新たなスキルを身につけるための絶好の機会でもあります。失業手当の受給中に利用できる様々な職業訓練プログラムを活用しよう。
- 無料または低額で受講できる「公共職業訓練」
- 失業手当を受給できない人向けの「求職者支援訓練」
- 厚生労働大臣が指定し教育訓練の受講費用の一部を支給する「教育訓練給付制度」
これらのプログラムを活用することで、市場価値の高いスキルを獲得し、再就職の可能性を高めることができます。特に、自身のキャリアプランに合わせた訓練を選択することが重要です。
失業手当は、単なる金銭的支援ではなく、キャリアの転換点として活用することができます。この期間を有効に使い、より良い就職機会につなげることが重要です。次のセクションでは、失業手当に関するよくある質問について答えていきます。
まとめ
失業手当の受給回数制限については、単純に「何回」という形では定められていません。受給者の年齢、雇用保険の加入期間、離職理由などの要因によって、受給可能日数や期間が決定されます。基本的には、1回の失業につき1回の受給が可能ですが、再び就職し、新たに受給資格を得れば、再度受給することができます。
失業手当は、単なる金銭的支援ではなく、新たなキャリアへの踏み台として活用することができます。この機会を利用してスキルアップを図り、より良い就職機会につなげることが、制度を最大限に活用する方法と言えるでしょう。
失業という困難な状況に直面した際には、利用可能な全ての支援制度を把握し、積極的に活用することが重要です。同時に、長期的なキャリアプランを考え、次のステップに向けた準備を進めることで、より安定した職業生活を実現することができるでしょう。
よくある質問(FAQ)

失業手当に関しては、多くの人が様々な疑問を抱いています。ここでは、特に受給回数に関連する代表的な質問とその回答を紹介します。
- 受給中に一時的な仕事をした場合の影響は?
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失業手当の受給中に一時的な仕事(アルバイトやパートタイム)をした場合、その収入によっては手当の減額や停止が生じる可能性があります。
ただし、一時的な仕事をしたからといって、失業手当の受給資格がなくなるわけではありません。働いた日数分だけ受給期間が延長されるため、総支給額に大きな影響はありません。
- 受給期間中に病気になった場合はどうなる?
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失業手当の受給中に病気やケガで就労が困難になった場合、「傷病手当」に切り替わる可能性があります。傷病手当は、最長で1年6ヶ月間受給することができます。
病気や怪我の状況によっては、失業手当の受給を一時中断し、健康保険の傷病手当金を受給する選択肢もあります。状況に応じて、ハローワークや医療機関に相談することをおすすめします。
- 海外に移住する場合の失業手当は?
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基本的に、失業手当は日本国内に居住している間のみ受給できます。海外に移住する場合、次のようなルールがあります。
- 短期の海外渡航(概ね3ヶ月未満):事前にハローワークに申し出れば、帰国後に受給を再開できる可能性があります。
- 長期の海外移住:失業手当の受給資格が失われます。
ただし、海外で就労し、帰国後に失業した場合、一定の条件を満たせば日本の雇用保険制度の適用を受けられる場合があります。これは国際社会保障協定に基づくもので、対象国や条件が限定されています。
海外移住を考えている場合は、事前にハローワークに相談し、自身の状況に応じた適切な対応を確認することが重要です。
これらの質問は、失業手当の受給に関する一般的な疑問の一部に過ぎません。個々の状況によって適用される規則が異なる場合があるため、具体的な疑問がある場合は、ハローワークや専門家に直接相談することをおすすめします。