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本記事では、固定残業代制度の概要や問題点、そしていつ辞めるべきかについて、労働問題の専門家の見解を交えながら詳しく解説します。
固定残業代とは?
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固定残業代とは、一定時間分の残業代をあらかじめ基本給に上乗せして支払う制度です。この制度は、残業代の計算を簡略化し、労使双方の事務負担を軽減することを目的としています。
法的根拠としては、労働基準法第37条に基づいており、割増賃金の支払いを定めた規定に準拠しています。ただし、固定残業代制度そのものを直接規定した法律はなく、判例や厚生労働省のガイドラインによって運用されています。
自身の会社が出している求人で、固定残業代が適切に表記されているか確認してみましょう。
適切でない場合は、何か怪しいと考え見直してみることが必要です。
厚生労働省/固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。
固定残業代制度を会社が利用するにはいくつかの理由があります。そのメリットについてまずは確認してみましょう!
- 企業側の残業代管理が容易になる
- 労働者の毎月の収入が安定する
- 採用時の給与定時が明確になる
一方でデメリットもありますので、しっかりと確認して良し悪しを見極めましょう。
- 実物の残業時間が固定残業時間を超える可能性がある
- 残業をしなくても固定残業代が支払われるので、長時間労働を助長する可能性がある
- 労働者の実質的な時給が低下する可能性がある
固定残業代制度は、適切に運用されれば労使双方にとってメリットのある制度ですが、過多に設定されると労働者に不利益をもたらす可能性があります。
固定残業代が過多と感じる状況
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固定残業代が過多であるかどうかを判断するには、まず一般的な相場を知る必要があります。固定残業代の相場は業界や職種によって異なりますが、多くの場合、月20〜30時間程度の残業に相当する金額が設定されています。
具体的な金額としては、月給25万円の場合、固定残業代として3〜5万円程度が一般的です。ただし、これはあくまで目安であり、個々の労働条件や企業の方針によって大きく異なる場合があります。
固定残業代が過多と判断される基準は?
固定残業代が過多と判断される基準としては、次のような点があげられます。
- 「実際の残業時間>固定残業代時間」となっており乖離が大きい
- 固定残業代の金額が基本給の30%を超えている
- 固定残業時間が45時間/月(法廷時間外労働の限度)を超過している
固定残業代の過多の具体的な事例を見てみよう!

年齢:30代前半
月給30万円のうち10万円が固定残業代として設定されていました。これは60時間分の残業に相当する金額でしたが、実際の残業時間は月平均20時間程度でした。この場合、固定残業代が明らかに過多であり、Aさんの実質的な時給は低下していると言えます。

年齢:20代後半
固定残業代として月50時間分が設定されていましたが、実際には毎月70〜80時間の残業をしていました。この場合、固定残業時間を超える部分の残業代が適切に支払われているか確認する必要があります。
このような状況に直面した場合、労働者は自身の権利を守るために適切な行動を取る必要があります。次のセクションでは、固定残業代の問題点についてさらに詳しく見ていきましょう。
固定残業代の労働者権利などに与える問題点
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固定残業代制度には、労働者の権利を侵害する可能性のある重大な問題点がいくつか存在します。これらの問題点を理解することは、自身の労働環境を適切に評価し、必要に応じて改善を求める上で重要です。
問題①長時間労働の助長
固定残業代が給与に含まれているため、労働者は残業をすることが当然であるという意識を持ちやすくなります。また、企業側も固定残業代分の労働を期待する傾向があり、結果として長時間労働が常態化してしまう可能性があります。
この問題は、労働者の健康や仕事と生活のバランスを著しく損なう可能性があります。長時間労働は身体的・精神的な健康問題を引き起こす主要な要因の一つであり、過労死や過労自殺のリスクを高めることにもつながります。
問題②実際の労働時間との乖離
固定残業代が実際の労働時間と乖離している場合、労働者は適正な対価を得られていない可能性があります。例えば、固定残業代が30時間分と設定されているにもかかわらず、実際の残業時間が50時間を超えている場合、労働者は20時間分の残業代を受け取れていないことになります。
この問題は、労働基準法で定められた「労働に対する適正な対価の支払い」という原則に反する可能性があります。また、労働者の労働意欲を低下させ、生産性の低下にもつながる可能性があります。
問題③労働者の権利侵害
固定残業代制度は、労働者の権利を侵害する可能性のある制度です。次にあげるポイントに関しては、特に問題になるものとなります。
- 実際の残業時間>固定残業時間となった場合、超過分の残業代が不払いとなるケース。
- 固定残業代制度の影響により、実際の労働時間が正確に把握されない可能性がある。
- 固定残業代が給与に含まれている為、有給取得がしにくい雰囲気が生まれる。
固定残業代制度の問題点を認識することは、自身の労働環境を適切に評価し、必要に応じて改善を求める上で非常に重要です。
固定残業代に関する法律
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固定残業代制度は、労働基準法を基本としながら、判例や厚生労働省のガイドラインによって規制されています。この制度を適切に理解し、自身の権利を守るためには、関連する法律や規制について知ることが重要です。
法令関係①労働基準法の規定
労働基準法では、固定残業代制度そのものを直接規定していませんが、残業代の支払いに関する基本的な規定が設けられています。特に重要なのは以下のポイントになります。
- 法廷労働時間を超える労働に関しては、25%以上の割増賃金を支払わなければならない
- 60時間/月を超える時間外労働については、50%以上の割増賃金を支払わなければならない
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置(労働時間の記録、保存など)
これらの規定は、固定残業代制度を導入している企業にも適用されます。つまり、固定残業代を設定している場合でも、実際の労働時間を適切に管理し、法定時間を超える労働に対しては適正な割増賃金を支払う必要があります。
法令関係②最近の判例
固定残業代に関する裁判例も増加しており、これらの判決は制度の運用に大きな影響を与えています。代表的な判例としては以下のようなものがあります。
これらの判例では、固定残業代制度が有効とされる条件として、次の点が重視されていることが示されました。
- 固定残業代の金額が実際の残業時間に対して適正であること
- 労働者に対して固定残業代の内容(何時間分の残業代か、金額はいくらかなど)が明示されていること
- 固定残業時間を超える残業に対しては別途残業代が支払われること
法令関係③厚生労働省のガイドライン
厚生労働省は、固定残業代制度に関するガイドラインを公表しています。このガイドラインでは、次の点が重要視されています。
-
固定残業代の金額と対象となる時間数を明確に示すこと
-
固定残業時間を超える残業については別途残業代を支払うこと
-
実際の残業時間が固定残業時間に満たない場合でも、固定残業代を全額支払うこと
-
労働時間の適正な把握と管理を行うこと
これらの法律や判例、ガイドラインは、労働者の権利を守るための重要な基準となっています。固定残業代が過多だと感じた場合、これらの基準に照らし合わせて自身の状況を評価し、必要に応じて適切な対処を行うことが重要です。
過多な固定残業代への対処法
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固定残業代が過多だと感じた場合、労働者には様々な対処法があります。ここでは、会社との交渉、労働組合の活用、労働基準監督署への相談という3つの主要な対処法について詳しく説明します。
対処法①会社との交渉方法
まず最初に考えるべき対処法は、会社との直接交渉です。次の手順を参考にしてみて下さい。
- 実際の労働時間と固定残業代の内容を詳細に記録し、問題点を明確にするなど事実関係の整理
- 法令関係などを事前に調べ、自身の主張の根拠を固めるなど交渉の準備
- 問題点の具体的な説明、改善の提案を事実と法律に基づいて上司や人事部門と面談
- 固定残業時間の見直しや残業時間の適正管理について具体的な改善案の提示
- 面談の日時や内容、会社側の回答など交渉経過の記録
対処法②労働組合の活用
労働組合がある場合、組合を通じて会社と交渉することも効果的な方法です。次のようなメリットが生じます。
- 個人で対処するよりも、組合を通じて交渉することで、より強い交渉力を持つことができる
- 他の労働者と共同で問題提起することで、会社側が真剣に対応せざるを得なくなる
- 多くの労働組合は弁護士などと提携しており、専門的なアドバイスを得られる
- 団体交渉により、より公式な形で会社側と交渉することができる
対処法③労働基準監督署への相談
会社との交渉が難航する場合や、より公的な対応を求める場合は、労働基準監督署への相談も有効な手段です。次にあげるステップで活用しましょう。
- 相談準備:
労働条件や実際の労働時間を示す資料を用意します。 - 相談の実施:
最寄りの労働基準監督署に出向くか、電話で相談します。 - 長蛇の要請:
労働基準監督署が必要と判断した場合、会社に対して調査が行われます。 - 是正指導:
法令違反が見つかった場合、労働基準監督署から会社に対して是正指導が行われます。
これらの対処法を適切に活用することで、過多な固定残業代の問題解決に向けて具体的な行動を取ることができます。しかし、状況によっては退職を考えざるを得ない場合もあります。
退職を考えるべき状況
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固定残業代が過多であるという問題が解決されない場合、退職を考えるべき状況もあります。ここでは、健康への影響、キャリア形成への影響、家庭生活への影響という3つの観点から、退職を検討すべき状況について説明します。
状況①健康への影響
長時間労働が続くことで、身体的・精神的健康に深刻な影響が出始めている場合は、退職を真剣に考える必要があります。以下のような症状が現れた場合は要注意です。
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慢性的な疲労感や睡眠障害
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ストレス関連の身体症状(頭痛、胃腸の不調など)
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うつ症状や不安障害の兆候
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高血圧や心疾患のリスク増加
これらの症状が現れている場合、まずは産業医や専門医への相談を検討しましょう。しかし、労働環境の改善が見込めない場合は、健康を守るために退職を選択することも重要です。
状況②キャリア形成への影響
過度な残業や不適切な労働環境は、長期的なキャリア形成にも悪影響を及ぼす可能性があります。どのような点で現れるのかを確認しておきましょう。
- 自己啓発や新しいスキルを学ぶ時間が確保できないなどのスキルアップの機会の喪失
- 業界の最新動向をキャッチアップできないなど業界トレンドへの対応の遅れ
- 長時間労働に慣れすぎて他の企業文化に適応しづらくなるなどの転職市場での不利
これらの問題が顕在化している場合、キャリアの将来性を考えて転職を検討することも一つの選択肢です。
状況③家庭生活への影響
固定残業代が過多で実際の労働時間が長い場合、家庭生活にも大きな影響を与える可能性があります。
- 家族との時間が減少し、子育てや家族団らんの時間確保ができない
- 家事や育児などにおいてパートナーの負担が増加する
- 疲労やストレスにより家族との関係性が悪化する
- 仕事中心の生活になりワークライフバランスが崩壊する
これらの問題が深刻化している場合、家庭生活を守るために転職を考えることも重要です。
退職前に確認すべきこと
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固定残業代の問題から退職を決意した場合、実際に退職する前に確認しておくべき重要な事項があります。ここでは、未払い残業代の請求、有給休暇の消化、次の職場の準備という3つの観点から、退職前のチェックポイントを解説します。
未払い残業代の請求
退職前に、これまでの未払い残業代がないか確認し、必要に応じて請求することが重要です。そのためには以下のステップを行いましょう。
- 労働時間の記録確認
タイムカードや自身で記録した労働時間を精査し、固定残業代を超える残業時間がないか確認します。 - 未払い残業代の計算
超過した残業時間に対する残業代を計算します。この際、深夜労働や休日労働の割増率にも注意が必要です。 - 会社への請求
未払い残業代が確認された場合、会社に対して文書で請求します。この際、計算根拠を明確に示すことが重要です。 - 交渉と解決
会社側と交渉し、未払い残業代の支払いについて合意を得ます。合意に至らない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することも検討しましょう。
未払い残業代の請求権は退職後2年間有効ですが、在職中に解決できれば、よりスムーズに処理できる可能性が高いです。
有給休暇の消化
退職前に残っている有給休暇を可能な限り消化することをおすすめします。
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残存有給休暇日数の確認
人事部門に確認するか、自身で記録している場合はそれを元に残りの有給休暇日数を把握します。 -
有給休暇取得計画の立案
退職日までの期間で、できるだけ多くの有給休暇を取得できるよう計画を立てます。 -
上司との相談
有給休暇の取得について上司と相談し、業務への影響を最小限に抑えつつ、取得できるよう調整します。
有給休暇は労働者の権利ですので、可能な限り消化するよう心がけましょう。
次の職場の準備
スムーズな転職のために、次の職場の準備も重要です。
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求人情報の収集
自身のスキルや経験、希望する労働条件に合った求人情報を集めます。 -
履歴書・職務経歴書の準備
最新の情報を反映させた履歴書と職務経歴書を作成します。 -
面接対策
想定される質問への回答を準備し、必要に応じて模擬面接なども行います。 -
スキルアップ
転職までの期間を利用して、必要なスキルの習得や資格取得に取り組みます。 -
引き継ぎ準備
現在の職場での円滑な引き継ぎのために、業務マニュアルの作成や必要書類の整理を行います。
まとめ
固定残業代制度は、労使双方にメリットがある反面、労働者の権利を侵害する可能性も秘めています。特に、固定残業代が過多に設定されている場合、長時間労働の助長や実質的な賃金の低下など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
本記事では、固定残業代が過多だと感じた際の対処法として、以下の点を解説しました。
- 会社との交渉:労働時間の記録や法的根拠を基に、適切な交渉を行う
- 労働組合の活用:集団的な交渉力を活かして問題解決を図る
- 労働基準監督署への相談:公的機関の力を借りて問題に対処する
退職を決意した場合も、未払い残業代の請求や有給休暇の消化など、退職前に確認すべき重要事項があることを忘れないでください。
固定残業代制度は今後、働き方改革や法改正の影響を受けて変化していくと予想されます。労働者は、これらの変化に注目しつつ、自身の権利を守るために必要な知識を身につけ、適切な行動を取ることが求められます。
よくある質問(FAQ)

- 固定残業代は法律で定められているのですか?
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固定残業代制度そのものは法律で直接規定されていませんが、労働基準法の残業代支払いに関する規定に基づいて運用されています。厚生労働省のガイドラインや裁判例によって、その適法性や運用方法が判断されています。
- 固定残業代を超える残業をした場合、追加の残業代は支払われますか?
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はい、固定残業時間を超える残業に対しては、別途残業代が支払われるべきです。これは厚生労働省のガイドラインでも明記されており、固定残業代制度の有効性を判断する重要な基準の一つとなっています。
- 固定残業代が過多だと感じた場合、どのような対応が効果的ですか?
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まずは自身の労働時間を正確に記録し、実態を把握することが重要です。その上で、会社との交渉を試みることをお勧めします。交渉が難航する場合は、労働組合や労働基準監督署に相談するのも効果的な方法です。
- 固定残業代制度のある会社を退職する際、特に注意すべき点はありますか?
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退職前に未払い残業代がないか確認し、必要に応じて請求することが重要です。また、残っている有給休暇の消化や、次の職場の準備も忘れずに行いましょう。退職後の未払い残業代請求権は2年間有効ですが、在職中に解決できればよりスムーズです。
- 今後、固定残業代制度はどのように変化していくと予想されますか?
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働き方改革の影響により、固定残業代制度の運用はより厳格化されていくと予想されます。残業時間の上限規制や労働時間管理の厳格化により、過度な固定残業代の設定が困難になる可能性があります。また、制度の透明性や公平性を高める方向での法改正も検討される可能性があります。