働き方改革で様々な働き方の改善などが進んでいますが、それでも残業が多い会社にお勤めの方は多いでしょう。
今回は「残業が多いので辞めたい!」という人に向けて、どのくらいになれば残業は多いのか、辞めるべき判断基準などを詳しく解説していきます。
辞めたいときの上手な退職方法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 残業は「月45時間、年360時間」と法律で決められている
- 残業が多くて辞めたいときの辞める判断基準は5つ
- 法定内の残業でも体調不良になっているなら退職を検討すべき
- 自分で退職を伝えられないときは退職代行を頼ろう!
残業は何時間を超えると「多い」のか?基準をご紹介
労働基準法第32条には以下のように定められています。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。(労働基準法第32条抜粋)
引用元:e-Gov検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
つまり「1日あたり8時間、1週間あたり40時間」を超えて働かせると、違法ということになります。ただし労使間で36協定を結んでいる場合、以下の条件で時間外労働が認められます。
- 一般労働者の場合・・・月45時間、年360時間
- 1年単位の変形労働時間制を採用し、その対象期間を3カ月超とした場合・・・月42時間、年320時間
残業時間の限度は年間360時間が限度なので、1ヶ月あたり30時間を超えてくると「残業時間が多い」といえそうです。また特別条項付き36協定を結んでいる場合は、さらに残業時間の限度を延長することが可能になります。
例外的事情なしで残業時間が45時間を超えると違法となる
先ほど「特別条項付き36協定を締結すれば、残業時間を延長できる」とご説明しました。
ただし特別条項付き36協定は「大規模なクレーム」や「機械のトラブル対応」など、臨時に特別なやむを得ない事情があったときに労使が話し合い締結するものです。
発動できるのは年6回までなので、当たり前のように毎月80時間残業が発生している場合は、法律違反になり使用者に罰則が科せられます。
- 時間外労働が年間720時間以内
- 時間外労働と休日労働を合わせて月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計については、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
上記の条件では、1ヶ月あたりの残業時間が100時間まで認められることになりますが、実際は残業時間が80時間を超えると健康障害を引き起こすリスクが高いといわれています。
また「80時間を超える残業が2ヶ月以上」、「月100時間を超える残業が1ヶ月」続くと労災認定されやすくなるようです。
残業が多いと感じている方へ!辞めるべき判断基準をご紹介
残業が多いと、疲れを引きずったりプライベートの時間がなくなったりといったマイナス面が多いです。かといって会社を辞めると安定した収入を失ってしまうので、簡単に退職に踏み切れない人もいることでしょう。
ここでは会社を辞めるべき判断基準をご紹介します。
- 1日の残業時間が3時間以上が当たり前
- 45時間以上残業しているのに残業代が付かない
- 仕事の疲れ・ストレスで体調不良が発生している
- 人手不足で毎日残業している
- 残業が多い社員が高い評価を受けている
判断基準①1日の残業時間が3時間以上が当たり前
1日の残業時間がどのくらいあるか考えてみましょう。36協定を結んでいる会社では1ヶ月あたり45時間1年で360時間を上限として残業が認められていますので、1ヶ月あたりの残業可能時間は30~45時間ということになります。
毎日3時間の残業で月20日働いたとすると、1ヶ月あたりの残業時間は60時間、年間で720時間です。
特別条項付き36協定を結んでいれば、「年間720時間以内」というのはぎりぎりでクリアできています。しかし「1ヶ月あたり45時間を超える残業ができるのは6ヶ月以内」という範囲を超えているので、法律違反になります。
このような法律違反をしている会社は他にも法律違反している可能性があるので、辞めて問題ありません。
判断基準②45時間以上残業しているのに残業代が付かない
先にも述べましたが、労働時間の上限は1日あたり8時間、1週間あたり40時間です。労働時間の上限を超えた部分が「残業時間」で、労働基準法第37条には残業代について以下のように定められています
労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(労働基準法第37条抜粋)
引用元:e-Gov検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
残業が発生すると、使用者は通常賃金の1.25~1.5倍の割増賃金を支払わなければいけません。
例えば給料の時間あたりの単価が1,000円だったとすると、45時間残業すれば56,250円、1年続くと675,000円にもなります。
なかには「うちの会社残業代出ないから」といわれて、わかったうえで入社している人もいるかもしれません。
しかし残業代の有無は会社の独自ルールで決められるものではなく、法律にのっとって発生するものです。会社の都合で、時間もお金も奪われて働き続けるなんて馬鹿馬鹿しいですよ。
判断基準③仕事の疲れ・ストレスで体調不良が発生している
体力や忍耐力は人それぞれです。会社がちゃんと法律通りの残業時間だったとしても、残業することで仕事の疲れやストレスが蓄積して心身に悪影響を及ぼしているなら退職を検討しましょう。
心身の疲労やストレスを抱えたまま無理に仕事を続けていると、いつか限界がきてしまって日常生活に支障をきたすように恐れもあります。
仕事ができる場所は今の会社だけではありません。じっくりと自己分析をして、自分の生活スタイルに合った仕事に就くことが大切です。
判断基準④人手不足で毎日残業している
人手不足には「一時的な人手不足」と「慢性的な人手不足」の2種類があります。一時的なパターンであれば、すぐに会社が人員を補充してくれるのでそんなに心配する必要ありません。残業が多いのも一時的なことでしょう。
危険なのは慢性的なパターンです。「新人を入れてくれるけど、すぐに辞める」「優秀な人が立て続けに辞めていく」といったことはありませんか?
新入社員はまだ会社に染まっていないので、会社に慣れてしまったあなたには感じられない「会社のおかしなところ」に気づいて辞めていってしまいます。常に残業が多い会社なんて、親入社員に「異常」だと思われても仕方ありません。
また優秀な人がどんどん辞めていく状態は、会社の業績が危なかったり傾いたりしている兆候だと思っていいでしょう。
優秀な人は様々な情報にアンテナを張っていて、「会社の異常」にもいち早く気づきます。そのため他の人達が慌て出す前に、さっさと会社を去ってしまうのです。
「優秀だからヘッドハンティングでもされたのかな」なんてぼんやり見送っていると、残業だけさせられて「会社と共倒れ」なんて馬鹿を見るかもしれません。
判断基準⑤残業が多い社員が高い評価を受けている
「遅くまで残って仕事をしている=会社に尽くしている」という危険な考え方があります。これは古い体質の会社によくあることで、「コストパフォーマンス」や「タイムパフォーマンス」といった意識が全くありません。
例えばある業務を、AさんとBさんそれぞれに任せたとします。
Aさん・・・午後4時には業務を終えて、次の業務にとりかかり定時に退社。
Bさん・・・定時から2時間後に業務を終えて退社。
Aさんのほうが優秀な社員であることは明らかですよね。しかし上司からはBさんが「よく頑張っている」と評価され、昇給していきます。
このような会社にいる限りAさんは正当な評価を受けることはできません。自分の能力に見合った評価を得るために、早く転職すべきです。
残業が多いので辞めたい!退職手順をご紹介
ここからは残業が多いので会社を辞めたい!という方に退職の手順をご紹介します。
残業が多くて辞めたい時におすすめな退職理由
退職理由は可能な限り本当のことを伝えるほうがいいです。しかし「残業が多いので辞めます」と言うと、「他の人も頑張っているのに!」「今退職したら、訴える」などトラブルになることが考えられます。
残業が多くて退職したいときにおすすめできる理由は以下になります。
- キャリアアップのための転職
- 起業のために資格の勉強をする
- 大学に通い直す
残業が多くて辞めたいときはなるべくポジティブな内容の退職理由を伝えて、上司に不快感を与えないようにしましょう。
ただし残業で体調不良になってしまった場合は、素直に「体調不良で働けない」と伝えるのもアリです。その際には退職を伝える前に、医師に診断書を作成してもらっておきましょう。
診断書は、あなたの病名や症状などが詳しく記載されている書類です。診断書を見せながら退職の意志を伝えると上司もあなたの状況をよく理解できるため、退職に納得してくれやすくなります。
会社を辞めると言いにくいなら退職代行を頼ろう
残業が多い会社はいわゆる「ブラック企業」の場合も多いため、会社を辞めますと言いにくいこともあるはずです。
そのようなときは退職代行を頼ってください。退職代行に依頼すれば会社に行って怖い上司に対面で退職の意志を伝えなくても、スムーズに退職することができます。
- 会社に行かずに退職できる
- 上司に会わずに退職できる
- 上司や会社の人と直接連絡を取らなくていい
- 即日退職可能
- 未払残業代や有給消化など退職の交渉ができる
- 退職の書類を確実にもらえる
退職を伝えるのが怖い会社に「今までの残業代払ってください!」なんて、とても言えないですよね。退職代行はあなたに代わって未払残業代の交渉が可能なので、損せずに退職することができます。
残業が多くて会社を辞めた人の体験談
残業が多くて退職した人達は、いったいどのような体験をしたのでしょうか?ここでは実際に退職した4人の方の体験談をご紹介します。
「残業の常態化」「残業で疲れてしまった」「体調不良になった」など、きっと今のあなたに近い体験もあるはずです。
体験談①残業が常態化していて辞めた20代女性
年齢:20代
勤続年数:5年
私は保育士をしていました。園児たちは可愛かったけど、不満のほうが大きくなって辞めました。雑務が多い。無駄な書類が多い。そのせいでサービス残業が多く、それでは間に合わないから、家にまで持ち帰って仕事をしていました。休みの日は毎日家でせっせと色画用紙で工作したり、保育園のおたよりの文章まとめたり。先輩からは「こんなの当たり前だよ」と言われてあーもうダメだと思って退職を決意。年度末で卒園児と一緒に卒園しました。
体験談②毎日が残業で疲れた20代男性
年齢:20代
勤続年数:3年
僕の会社は謎のルールがあって新入社員は始業の2時間前に行って掃除、上司や先輩より先にデスクについて仕事を始めていないといけませんでした。さらに先輩が帰るまで、帰らずに雑務のお手伝い。これもルールです。朝晩合わせて毎日3~4時間は残業でした。それなのに、朝の分は会社ルールで「残業ではない」ことになっていたので、残業代は1時間分くらいしかつかない。自分の仕事での残業なら仕方ないけど、人の都合の残業ばかりで疲れてしまって転職活動を開始。残業と通常業務と転職活動続けるのはきつかったですけど、今は基本定時上がりで残業代もしっかりつく会社で働けています。
体験談③残業を断られずに辞めた工場勤務の20代男性
年齢:20代
勤続年数:7年
工場って社員以外にもパートやバイトも働いていて、機械を止めるわけにもいかないからパートやバイトがシフトの穴開けたら正社員で補うしかないんですよ。僕のいた工場は僕の他5人ほど正社員がいたんですけど、シフトの穴を埋めたり急な発注がくると残業するしかない。工場長に「ごめんね」って謝られると、断るわけにもいきませんでした。工場長が一番頑張ってくれていましたし。ある日いつものように残業をしていたら、急に工場長が倒れてしまって、その時に目が覚めました。「ここにいちゃまずい!」って。退職するときは本部の人に伝えなくちゃいけないんですが、怖くて退職代行にお願いすることにしました。どうなるか不安だったけど、たまっていた有休も全部消化して退職できましたよ。
体験談④残業が40時間を超えて体調不良になった20代女性
年齢:20代
勤続年数:1年半
自分で選んだ仕事だし頑張ろうと思っても、体調不良になったらおしまいです。残業が毎日2時間、周りの人たちは普通に仕事してるし、私もいつか慣れるものなんだろうと思っていました。それが半年くらい経った頃から、突然耳が聞こえにくくなったりめまいや激しい頭痛がするようになりました。疲れかなと思っていたんですが、しばらくすると今度は耳鳴りがして夜眠れなくなってきました。さすがにダメだと感じて病院に行くと、うつ病だと診断され、療養をすすめられました。
残業が多いので辞めたい人からよくある質問
-
残業が40時間なのですがホワイトと言えますか?
-
残業が常に40時間なのか、突発的に40時間なのかによります。というのも36協定を締結している会社ならば1ヶ月あたり45時間まで、1年間で360時間までの残業が認められているからです。
常に40時間だった場合は1年間で480時間の残業になるので、法律違反をしており、ブラックといえます。
しかし残業時間が40時間、15時間、20時間などとでこぼこしており、1年間に360時間以内収まるようならホワイトです。
40時間を目安にするよりも、1ヶ月あたり30時間を超えているかどうかを目安にしたほうがホワイト・ブラックの判断はしやすいでしょう。 -
残業が40時間ってどんな感じですか?
-
実は残業40時間は日本の会社では平均的な長さで、多くの会社では「普通のこと」とされています。
例えば毎日2時間ほどの残業を繰り返すと、20日働けば簡単に40時間になってしまいます。6時定時だとすると、8時まで残業して退勤する感じです。会社勤めのひとからすると「あるある」かもしれません。
しかし働いている人が「あまり大変だと思わない」という感覚だから、いつまでも残業の改善がされないという会社も多くあります。 -
残業は何時間からきつくなりますか?
-
残業をきつく感じる時間は人それぞれです。30分でも嫌な人もいれば、何時間でも集中して仕事ができるという人もいるでしょう。
何時間くらいできつくなるかは特定しづらいですが、残業時間が80時間を超えると健康障害を引き起こすリスクが高いといわれています。
また「80時間を超える残業が2ヶ月以上」、「月100時間を超える残業が1ヶ月」続くと労災認定されやすくなるようです。
残業が多いので辞めたい!まとめ
残業が多いので辞めたいときは、「残業時間が違法かどうか」「残業代が貰えているか」などをまずは退職の基準にしましょう。
しかし残業がきついと感じる感覚は人それぞれです。法定通りの残業だとしても、心身に悪影響を及ぼしている場合は退職を検討してください。
また自力で退職が難しいときには、退職代行を頼りましょう。退職代行に依頼すれば、退職手続きをほぼ丸投げにして退職することができます。